「ディープステート」と言う言葉を聞いたことが無いですか? 日本語訳では「闇の政府」とか「闇の国家」とされるものです。まあ、国や政府は実は裏の組織に動かされているみたいな主張で使われる言葉です。いわゆる陰謀論とかオカルトと言うもので片づけられるものでもあります。
しかし、ディープステートには今までになかった怖さがあります。怖いと言っても具体的にそういう組織が存在するというわけでもありません。では何が怖いかと言うとディープステートは「空集合」として人々に定義可能だという事です。
空集合とは数学とか論理学の用語で「グループは存在するが要素が無い集合」と言うものです。非常に分かりにくい用語ですが、大雑把に説明すれば「まだメンバーがいないバンド名を決めた直後」みたいなものと言えます。
「レコード会社がバンド名を決めてから、メンバーをオーディションする場合」
「アイドル事務所がグループ名だけ立ち上げて、メンバーは後で選考する」
などです。スポーツの試合の「ベスト4」と言うグループにも使えますが、その場合は「最初からベスト4と言うグループがあるがまだメンバーは未確定」と言う運用も出来ますし、「ベスト4が決まってからその集合が存在する」と言う考え方が出来るのでややこしいです。
しかし、数学では中身が無い状態で集合の定義が出来るわけです。余談ですが要素が1つだけの集合も数学では許されます。まあ、現実世界でいえばコミケの一人サークルや、バンドの「ハウンドドッグ」などはそれらの例だとも言えます。
そして、ディープステートも空集合であるわけです。ただ、要素が無くてもその集団は何か社会的に悪いことをしている集団であり世界が団結して倒す敵であると認知はされています。
この、「悪いという集団と認知されているが、具体的な構成要素が無い」と言う事が重要なわけです。
群集心理と言うものがありますが、お互いが共通の憎悪を持った場合に群集心理が働くわけです。しかし、具体的な憎悪である場合は全ての人が同じ対象になる事は可能性が非常に低いです。
ディープステートの場合はその中身は個々人が定義できるわけです。ある人のディープステートは「不法侵入する隣国」であったり「特定の民族」「特定の企業」「不満ある制度を実施している行政」などあるわけです。それらをディープステートと定義すればすべての人の憎悪が抽象的なディープステートに向くわけです。
残念ながら人は具体的なものに対しての恐怖より抽象的な物に対する恐怖の方に支配されます。
「会社Aは六価クロムを排水に流している」
より
「あの産業は環境に悪い廃棄物を放出している」
やさらに
「具体的には分からないがあの会社は社会に対して悪影響がある」
とと抽象的になればより心の中の不安が大きくなるわけです。
だから、具体的ではない「ディープステート」と言うものに対して恐怖を覚えるわけです。そして、個々人が自分が信じたい「ディープステート」を思う事が出来るわけです。これは、誘導したいリーダーにとって都合が良いわけです。
「私はディープステートと戦う光の戦士」
と言えば、それぞれがディープステートと決めつけた共通の目的に対して憎悪を向けられるわけです。
そして、暴走した民衆の多数決で決まった具体的な攻撃先に向かうわけです。
リーダーが具体的な行動を指示したわけでは無く群集が決めたわけだから強力に動くわけです。
これが、ディープステートと言う空集合を定義できる怖さでもあります。
最後に、ディープステートとか陰謀論に騙されない方法を説明して終わりにします。
まず、それほど最新の出来事に飛びつかないようにしてください。世間はそれ程早い者勝ちではなく必要な物は待てば手に入ります。また、早く手に入れる利点もありません。それより、世間が煽る問題あるものを手にしてしまう間違えの方が多いです。
次に、恐怖を覚えたら「何が怖いのか自分の目で確認」してください。特にディープステートの場合はもともとが空集合なわけなのでそれ自体には何も恐怖を感じないわけです。ただし、自分自身で空のディープステートに憎悪を追加した場合は危険です。決して自分でディープステートと言う空集合に憎悪を入れないでください。
最後に、何かおかしいと思ったら具体例を確実に挙げるようにしてください。「あの映画は悪影響がある」というだけでは危険です。具体的に考えて「殺人シーンが多い」「流血する」などの例があって初めて意思決定が出来るわけです。
こうすればディープステートと言う実体のない物を利用したミスリードに惑わされません。
あと、飛行機のマニュアルで「まずは自分の酸素マスクをつけてください」とあります。これと同じように他人のディープステートには関わらないでください。まずは自分のディープステートと言う空集合に注意することから始めてください。ディープステートが空集合であれば安心です。